1. 視線
国立西洋美術館にて。
今日から、今までの自分の写真について少しずつ思い出すことを書いていきたいと思います。こちらは、はじめてモノクロフィルムを詰めて撮影した写真です。撮影したカメラはPENTAX MZ-30、レンズはおそらくPENTAX D FA MACRO 100mm F2.8 WR。フィルムでの撮影に不慣れで手ぶれしています。それでも、私には思い出深い一枚です。
私はロダンの彫像が好きです。彼の作品を見るたびに、いつも人間の身体に秘められた精神のきらめきに感動します。
このとき私の目の前にいたのは、自分へ注がれる好奇の視線、非難の眼差し、それから逃れようとするイブの姿です。禁断の実を食べ、楽園を追われる存在となったイブ。しかし、非難されるにはあまりにも彼女は美しい。ふっくらとしてなめらかな肌、量感豊かな四肢。重ねた腕の間から見える眼差しは涙の粒で彩られ、一層輝きを増している。彼女が虐げられ、苛まれ、永久の罪人として聖書に名前を残すことになったのは、林檎を食べたためではない。この祝福された至高の美ゆえなのだ。
原罪を人類にもたらしたイブ。私は彼女をその美しさゆえに女神と呼ぶ。楽園を追われた女神は、このとき私の目の前にいました。
2015-12-24